勝手に赤い 畑のトマト

「今後、どうしますか」

頭が真っ白になりながら

ただ告げられた。

妊娠、5週。

いわば2ヶ月。

とうてい、産めるわけがなかった。

経済的なことはあるけど

なにより気持ちの問題だった。

本当に欲しい、人との子ではなかった。

取り返しのつかないことをしたと。

頭を強くうったように

ぐるぐると世界が回って見えた。

「妊娠」「中絶」と

はっきりした言葉を使わず

淡々とした言葉を選んでいる先生と

その後ろにいる看護師さんの気遣いが

余計苦しくなったし 痛かった。

軽率なのは自分だった。

自分がすべて悪かった。

浅はかだった。

愚かだった。

それなのに被害者のように

ただただ涙をこらえては、

超音波検査では耐えきれずに涙が出た。

楕円形の影が画面に見えて

あれが 自分の子だと、察した。

手術するには、お金がなかった。

せめて、もう少しゆっくり考えたいと

そう言ったけれど、時間は無かった。

時間は待ってくれず

子どもはすくすく育っていく。

育ってしまっては、それこそ子どもにも

自分の体にも大きな傷を与えると。

どうせいつものことだからと

もう少し遅かったら

子どもは胎芽から胎児になっていた。

震えた。

術日を決め、採血をした。

ちょうどクリスマスあたりで。

もし産みたくて授かった子どもなら

なんていいクリスマスプレゼントなのかと

笑顔で迎えられ、大事にしたんだろう。

それが、その反対に感じてしまっている。

血の繋がった、唯一の家族が

いま、ここに宿っている。

この瞬間この瞬間、

この子に栄養を送ってる源であり

母親となっている。

来週は、6週。

この子の息の根を、止める。

出てくる涙の意味がわからなくて

ただただ泣いて

ただただ責めて

それでも愛おしくなる下腹部を

さすっては、泣いている。